最新情報

文化財に命を吹き込む——“遺跡から学ぶ”を仕事にした卒業生の物語(1期生 森本さん)

2025/8/24

「文化財課って、どんな仕事をするところだと思いますか?」と聞かれて、すぐに答えられる人は多くないかもしれません。

宝仙学園理数インターの卒業生が卒業後、どういったことを行っているかを特集する記事の第三弾。

今回ご紹介するのは、静岡県磐田市で文化財の保護に携わる、本校第1期生の森本さん。遺跡や仏像、絵画といった文化財を守る日々を送りながら、地域の歴史と真摯に向き合う彼に、仕事のこと、進路選びの背景、そして高校時代に得た学びについて語ってもらいました。

 

遺跡を守る、という仕事

ー現在の職業と仕事内容を教えてください。

私は静岡県磐田市の市役所に勤務しており、文化財課に所属しています。主な仕事は、地中に埋まっている遺跡を守ることです。建物を建てる際に遺跡が壊されないよう、工事業者と話し合いをしながら、遺跡の深さを調査し、施工方法を調整しています。

ー遺跡以外にも文化財の保護に関わっているのですか?

はい。仏像や絵画などの有形文化財を保管したり、処分されそうな文化財を保護する活動も行っています。市の修蔵庫に収蔵することもありますし、補助金の案内や活用のサポートもします。
また、市民や小学生向けの講演会や、文化財の展示・企画展の運営も担当しています。
磐田市は文化財保護に力を入れているため、文化財課にも6〜7人の職員が在籍しており、私は現場の発掘調査のまとめ役として、作業員や重機オペレーターとの調整、現場管理などを行っています。

ー今の仕事のやりがいはどんなところにありますか?

文化財の魅力や大切さを、市民や子どもたちに伝えられることです。講演や企画展で「こんな貴重なものが自分たちの街にあったんだ!」という声を聞くと、自分の仕事の意義を実感できます。
自分の住んでいる場所に誇りを持ってもらえる仕事ってなかなかない気がしています。

 

“好き”から始まったキャリア

ー今の仕事に就こうと思ったきっかけは何でしたか?

もともとは、学校の先生を目指していました。歴史が好きだったこともあり、当時教員免許が3種類取得できる駒澤大学文学部歴史学科・考古学専攻に進学しました。
入学後のオリエンテーションで文化財保護という進路を知ったものの、最初はあまり興味を持てませんでした。

ーその後、興味を持ったきっかけは?

大学の発掘サークルに先輩から誘われたことがきっかけです。夏は合宿形式の発掘調査、冬は測量調査に取り組みました。お寺に泊まり込み、自炊をしながら一か月近く、地域の歴史を調査し過ごす、その生活が自分に合っていたんです。
そこから一気に発掘にのめりこんでいき、卒業研究では、弥生時代の石器の変化をテーマに研究し、学科代表として卒業発表も行いました。

ー磐田市で働こうと思ったのはなぜですか?

大学時代に初めて発掘調査を経験したのが静岡県西部の古墳でした。その地域への愛着や、恩返しの気持ちから磐田市を志望しました。ちょうど文化財の専門職を募集していたタイミングだったこともあり、ご縁があったと感じています。

 

高校時代に得たかけがえのないもの

ー高校生活で今の仕事に活きていることはありますか?

一番大きいのは、部活動で培ったチームワークです。高校ではサッカー部に所属し、自分より先輩がいない中、仲間と一緒に一からチームを作っていきました。その経験が今の私にとても活きていると思っています。発掘作業は一人ではできません。重機のオペレーターや作業員と連携し、的確に指示を出す力は、まさに高校時代の経験から育まれたものだと思います。

ー進路を決める上で印象に残っている先生はいますか?

当時の担任だった社会科の鴇田先生の教えが今でも心に残っています。「いい大学に行くことが目的じゃない。なぜその仕事をしたいのか、どんな資格が必要なのかを考えなさい」と、キャリアの本質に向き合う指導をしてくれました。
先生に教わったマックス・ウェーバー著書の『職業としての学問』は、今でも折に触れて読み返す、大切な本になっています。

 

今の学生へのメッセージ

ー今の在校生やこれから入学する生徒へのメッセージをお願いします。

今の学生はSNSや生成AIなどの発達によって、我々の学生時代と比較にならないぐらいコスパを意識して行動しているイメージです。しかし効率だけを重視せず、たくさんの経験をしてみてほしいです。遠回りのように見えることも、後になって大きな財産になります。

そして、好きなこと、夢中になれることを恥ずかしがらずに突き詰めてください。学生時代「歴史が好き」、「発掘が好き」という人は周りにいませんでした。しかし、たとえ周りから理解されなくても、それはきっと“個性”になります。そしてその個性を突き詰めていけば、気が付くと周りには自分の個性に共感してくれる仲間ができてきます。 

学生時代は色々な経験をして自分の個性は何かを探してみてください! 

 

終わりに

インタビューの最後に森本さんが語ってくれたのが、「遺跡に教えてもらう」という言葉。これは文化財に関わる人たちが大切にしている考え方であり、彼の仕事そのものを象徴しています。
静岡県磐田市という地域の過去と未来をつなぐ架け橋として、文化財を守り続ける森本さんの姿は、“好き”を仕事にすることの素晴らしさを教えてくれます。高校生活の中で、ぜひあなたも、自分の「好き」を見つけてみてください。それがきっと、将来への一歩になります。

 

 

前回のインタビューはこちらから

卒業生インタビュー特別編!岩崎先生座談会

 

Return to Top ▲Return to Top ▲