最新情報

第11回 理数インターのグローバル 『☆☆☆のこころ』

2017/1/4

京都の老舗料亭『菊乃井』はミシュランの三つ星常連店でもある。三代目主人、村田吉弘さんは、若い頃、十分な修行経験も経ずに自分の店を持ったが全く客が入らず、苦しい時期があった。その時に徹底的に和洋食の料理本を読みあさり、料理を研究し、行きついた結論は「料理は科学だ」。全ての味には理屈がある、と学んだ。味は盗んで覚えろ、ではなく、菊乃井では全ての料理人がどの料理のレシピも閲覧可能だ。また、新人教育には先輩がマンツーマンであたる。しかも先輩側は「感覚的」な指導をすることは禁じられており、「なぜ、そうなのか」ということを、具体的な調理温度や調味料の分量などの数値も含めて伝えなければならない。勘や経験だけに頼らず、味の理屈を科学的に数値化してこそ伝統の味は伝わっていく。これは和食を守ることにもつながる。また、一部の金持ちだけが楽しめる風潮のある日本料理は「絶滅危機にある」と村田さんは警鐘を鳴らす。そこで全国の小学校を訪ね、教室で子供たちの目の前でダシをとり、試飲させる。「おいしい」と溜息が漏れるとき、これが食育なんだ、と語る。

その普及活動は国内に留まらない。ロンドンの試食会では、和牛のローストビーフにイチジクから作った「八丁味噌」ソースを絡めた。地元の食通も驚かせたこのアイデアは、アミノ酸や糖の化学反応、つまりメイラード反応によって味噌の旨みが生まれる知識を持っていたからこその応用問題だった。「ダシがない、昆布がない、醤油や味噌がない。だから日本料理が作れません、では世界中で和食が普及するはずがない。だったら頭を使えばいい。」村田さんは日本料理を正しく世界に発信する旗振り役として、和食のユネスコ無形文化遺産登録にも貢献した。

威張ることも、媚びることもせずに自分の大切にするものを惜しまず伝えていく姿勢。そして自分の知識や経験をもとに、新たな課題に直面するとそれを応用し、克服していく工夫。村田吉弘さんの精神は、グローバル人材の精神そのものである。

共学部高等部教頭・右田邦雄

Return to Top ▲Return to Top ▲