本校では中学3年の研修旅行として、シンガポール・マレーシアに行く。私は昨年度、クラス担任として引率をした。
さて、その出発前、せっかく現地に行くからには、現地の人と積極的に会話をしようという心積もりであった。シンガポールは公用語が英語になっているようだが、マレーシアでは英語と一緒にマレー語も使われているという。そこでマレー語の簡単なあいさつを覚えておいた。「おはよう」は「スラマッパギ」。「ありがとう」は「テレマカシ」。さらに、現地のガイドの方(なんとこの方は五か国語も話せる!)に教えて頂いた「バグース」という言葉。意味は「すごい」とか「すばらしい」というような意味らしいのだが、親指を立てて言うものらしい。
研修旅行の行程の中に、現地校との交流プログラムがあり、すばらしい大歓迎を受けた。そこで現地の生徒に、すかさず「バグース!」と声をかけると、割れんばかりの歓声で、「バグース!」と返してくる。さらに「アジアバグース!」と返す生徒もいる。よくわからないまま、オウム返しに「アジアバグース!」と返すと、また大喜び。
きっと、この喜びが、コミュニケーションの源泉なのだろう。私たち日本人は、コミュニケーションを難しく考えすぎているのかもしれない。言葉がわからなくても、知っている単語でいいから会話をしようという思いが大切なのだろう。よく考えてみれば、外国人が日本に来て、日本語を覚えてくれていると、たとえたどたどしくても、なんだか嬉しくなるのと同じだ。やはり、言語は使ってみないと面白くないのだ。きっとわたしのマレー語は変な発音だったのだろうが、それは二の次。翌日からは、ガイドさんから「バグース先生」と呼ばれてしまうようになった。
ちなみに、後から教えてもらったのだが、現地では「アジアバグース」というテレビ番組があるらしい。私は知らずに番組のタイトルを連呼していたのかもしれない。日本で言えば、「いいとも!」と連呼している外国人のようなものだ。テレマカシ。
国語科 金子 忠央