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#66 Keep Calm and…

2021/1/5

 新しい年、おめでとうございます。年の初めにあたり、今回はある英語のフレーズの紹介から。

 イギリスやNZの街角で“Keep Calm and …” で始まるポスターをよく見かけます。探してみると、掲示物のみならずシャツやマグカップのデザインまで、どうやら英語圏では広く身の回りに浸透しているフレーズのようです。

  元ネタは “Keep Calm and Carry On” (冷静になって戦い続けよ)という言葉で、これは第二次世界大戦時に英国政府が国民向けに作った3つのプロパガンダのひとつでした。うち2つは実際に鉄道駅の構内や街角に貼られたのですが、最後の一枚はナチスが本土上陸した非常事態に備え、最後まで使われることはありませんでした。

 ところが今から20年前、イギリス北東部の田舎町AlnwickにあるBarter Booksという、ヴィクトリア時代の鉄道駅を改造した古書店の倉庫からこの最後の一枚が発見されたのです。店主のStuart and Mary Manley夫妻はこれを気に入り店内に飾ったところ、常連客からも好評でリプリントを求められるほどだったとのこと。このポスターはちょっとした評判を呼びました。

 この人気に火をつけたのがイギリスのサッカーブランドのUmbroで、早速スパイクやユニフォームといった自社製品の広告に使いました。

 

 そうしたところ、このキャンペーンは大ヒットとなり、やがてこの “Keep Calm and…” のフレーズは英国全土に広がり、王冠とGill Sansのフォント体を用いてさまざまな形で転用されていったのです。もちろん学校用のものもあります。

 このフレーズは海を越え、他の英語圏でも見かけるようになりました。(もちろんNZバージョンです)

 そもそもこのフレーズが英国で流行った背景には、どんな非常事態にも冷静沈着に行動することを良しとする英国人気質が無関係ではないでしょう。「爆弾が降る中でも不屈の意思とユーモアを忘れずに、紅茶を嗜んでいた」と言うと誇張に聞こえるかもしれませんが、周りが騒がしいときほど敢えて冷静に、今起きていることに対処しよう、というイギリス紳士のモットーはいまの時勢にも通じます。

 英国ブランドのBeefeaterというジンメーカーが早速、「こんな時はステイホームして、ジンでも飲もう」とやったのはご愛敬ですが、コロナ禍のいま世の中にはさまざまな “Keep Calm” スローガンが流布されています。

 新しい年を迎えましたが、世の中がまだまだ落ち着かない今だからこそ、元祖 “Keep Calm and Carry On” のフレーズを念頭に置いておきたいと思います。

 (英語科 右田邦雄)

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