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#64 聞き上手は話し上手

2020/12/22

 まとまった内容を文章で読むのではなく音声だけで聞き、その要旨を理解することはたいへんな作業です。文字を読むのであれば、自分のペースで読み進めることができ、分らないところでは立ち止まったり、あるいは前に戻って読み返すことができます。しかし、音声だけで情報を得ようとすると、そうはいきません。相手の話すスピードについていき、話の内容を頭の中で整理しながら聞き進めなければいけません。話される内容が自分にとって馴染みのないことであれば尚更です。この大変な作業をこなすためには、普段から人の話を能動的に聞く、という姿勢が大切です。

 ひとの話に耳を傾ける、ということは集中力が必要です。その集中力の源は好奇心です。自分が知らない情報に接したときに、「つまんない」と言って、頭のスイッチをオフにしてしまうか、「何だか聞いたことない話だゾ」とアンテナの感度をあげ、集中して聴こうとするかでは、ひとの成長に大きな違いを生みます。

 授業中にこちらが雑談を始めたとたんに興味をなくす生徒がいます。そういった生徒はそっぽを向いて、退屈そうに手遊びを始めたりします。一方で、それまでろくに授業を聞いていなかった生徒が急に顔を上げ、目を輝かせてこちらの話を聞き入ったりします。長年教壇に立っている経験から、後者の生徒の方が圧倒的に学力の伸びが大きいことを知っています。

 教師のする雑談とは、一見本題に関係のなさそうなことが実は根底ではつながっているんだ、ということを示すためのものです。(センセイによってはその限りではありませんが)その意味では、自分の興味関心の向かないことであっても、実はそれを知ることによって自分の考えが深まったり、広がったりすることがあるのです。「深い穴を掘ろうと思ったら、できるだけ直径を広くとれ」ということです。

 日常的にひとの話に耳を傾けるという習慣を持つ生徒は、アンテナの感度の調整方法を知っています。これは大事な情報、これは要らない情報…と取捨選択しながら、情報を頭にインプットします。これは大切なコミュニケーションのスキルであり、能動的に聞く、とはこのようなことを言うのではないでしょうか。情報の発信(アウトプット)は正しい受信(インプット)がなければなされませんから、このような生徒は大概、聞き得た情報を上手に相手に伝えることができます。「聞き上手は話し上手」と言われる所以です。

 本校が「日本語リスニング」を入試の一つに加えたのはこのような理由からです。初めて聞く話(できる限り聞いていて興味を持てるトピックを考えていますが)を聴き、その内容をまとめたり、それに対して意見を述べてもらったりしています。もちろん、まずは話をきちんと理解できているかを確認しますが。このようなことがきちんとできる生徒は、それだけでも将来の成長のための大きなポテンシャルを持っていると思うからです。ご興味の向きは、ぜひ日本語リスニング説明会や体験会にいらして下さい。 (英語科 ・右田邦雄)

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