バングラデシュ出身のTazbir Ahmidさんは眼科のドクターで、現在東京大学の研究室に留学している。Tazbirさんは先週の土曜日、5年生が行った英語プレゼンテーション・コンテストの12人の外国人留学生ジャッジの一人である。ひとりの生徒のプレゼンが終わるごとに、まずはどこが良かったのか、どこに工夫の余地があったのかを身振り手振りを交え的確にコメントし、それからプレゼンの内容についての質疑を始めるという熱心さだ。
そのTazbirさんが『おもしろかった!』と絶賛したプレゼンが、飯塚奈津子さんの “Ruby Chocolate”。2年前のバレンタイン商戦に突如登場したルビーチョコ。ピンク色を発色させる特別なカカオ豆を使ったこのチョコレートはあっという間に市場を席巻したらしい。
こんな身近な話題を誰もが分る英語でときおり写真を見せながら、そして聴き手とアイコンタクトをとりながらの数分間は、まさに場が和む楽しい時間になった。プレゼンテーションとはまさに相手へのプレゼント、ということを実感させてくれた。
自分が伝えたいことを、自分の英語で表現して発表する。聴き手は日本に学ぶ外国人留学生たちだ。誰ひとりとして英語のネイティブスピーカーはいない。そこに意味があると思っている。
覚えてきた英語を読み上げるだけではスピーチではない。相手に伝わるような創意工夫が必要だ。そしてスピーチの後は質疑応答。これを自力で乗り越えることに価値がある。だから、この行事だけは何としても実施したかった。と言うのも、この行事は本来ならばアメリカ研修の前哨戦として今年の3月に実施するはずだったが、コロナ禍による休校措置の煽りを食って延期となり、実施の可否についても検討を重ねていたからだ。楽しみにしていたアメリカ研修旅行も中止となり、モチベーションも下がり半年以上経過して迎えた今回のイベント。おざなりな準備で臨む生徒も散見されるなか、この行事に自分なりの意義を見いだし、全力を注いでくれた生徒も少なからずいた。
後日生徒には伝えたが、こういう取り組みに参加すれば必ず得るものがあると考えるのはナイーブすぎる。学校はこのような場を提供することはできても、それは種まきに過ぎない。種は蒔かれたが、硬い土壌もあれば柔らかい土壌に蒔かれたものもある。大切なことは今後の各自の水やりだ。それなくして安易に成果は語れない。しかし、飯塚さんの文章を読むときっといい芽が出て育ってくれそうな気がする。
『良いプレゼンも悪いプレゼンもないんです。自分が全力を尽くしたのであれば、それがベストなプレゼン。』(Tazbirさんのコメント)
明日、文化祭の2日目に飯塚さんをはじめとする19名のベストプレゼンターによる「ファイナル」が開かれる。もう一度、ベストを尽くしたプレゼンが見られる。 (英語科・右田邦雄)