「なぜシンガポールまで行ってわざわざ日本企業を訪問する必要があるのか。その意味(目的)が最初よくわからなかった。でも、実際に訪問してみて、私なりにその意味を考えてみた。・・・・」 今年のアジア研修旅行中、ある一人の生徒が、クラスの仲間たちにこう話し始めた。
中学3年生のアジア研修旅行では、そのプログラムの中で、毎年、シンガポールに進出している日本企業数社をクラスごとに訪問している。それは中学2年生から始まるキャリア教育のひとつでもある。
帰国後の生徒の感想の中には、
「海外で働くことを考えるきっかけになった。」
「まだ将来の自分がどのようになっているか見当も付かなかったが、色々な道があることを学んだ。」
「海外で必要とされている日本人の能力や、どんな人が海外で活躍することが出来るのかを知ることが出来て、日本だけで働くという視野だけでなく海外で働くという視野も新たに自分の中に生まれて良かったと思う。」
「今海外で働く気がなくても将来どうなるかなんてわからないんだとわかった。外国は日本より様々な国の人がいる分平等で働きやすいのかなと思った。」
「海外で働くということに沢山の可能性の広さを感じました。シンガポールが多国籍だからこそというのもありますが日本の狭さに驚きました。将来は日本にいてはダメだと思いました。」
など、海外で働くことに関心を示したものがある。
しかし、シンガポールでの企業訪問の意味はキャリア教育に留まらない。生徒たちはそこでさまざまなメッセージを受け取り、一人ひとり考えている。
事実、冒頭の生徒は、「・・・みんながみんな、将来海外で働きたいと思っていて、海外の企業を訪問しているわけじゃない。でも、今回の訪問先で私は次のことを学び、考えた。今まで自分が考えていた常識と異なる新たな常識に出会ったときには、ただ単に自分の考えを捨てたり、曲げたりするのではなく、違うものとして受け入れていくことが大切なんだと。そしてそれは海外に限らないと。」
中にいるだけではわからない、外に出てみて初めてわかることこともたくさんある。
この生徒も、シンガポールでたくさんの違うものに出会い、Diversity(多様性)を感じたからこそ、この訪問から心に残るメッセージを受け取り、そして考えたのではないだろうか。
共学部中学校教頭 塩沢 潔