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#47 Just A Small Word..

2019/6/19

今年も5年生のアメリカ研修旅行から戻ってきました。

サンフランシスコの抜けるような青空、そしてその後に来る震え上がるような濃霧の寒さ。ヨセミテの大瀑布と切り立つ氷河の絶景。アメリカの大自然について、生徒たちはそのスケールの大きさを実感したはずです。

しかし、生徒たちは気がついたでしょうか。日常生活の様々な場面で見せる市井の人たちのさりげない心遣いに。バスを降りるときにドライバーへの ’Thanks.’。スーパーで人とぶつかりそうになったときの ‘Sorry.’。店員に声をかけるときの ‘Excuse me.’。とてもスケールの小さい話ですが、街にはこんな優しい言葉が溢れています。また、言葉に出さずとも、エレベーターで一緒になった他人と目が合うと、にこっと微笑む仕草が体に染みついています。さまざまな背景を持つ人たちが暮らす異文化環境の中で、できるだけ互いのストレスを軽くするためのコミュニケーションの工夫がなされていることをどれだけの生徒が意識したでしょうか。

翻って生徒たちはバスから降りると、並べられたスーツケースの中から自分のものを引っ手繰るように持っていきます。それを下ろしてくれた人を横目に見ながら、無言で。ホテルでは鍵のトラブルがつきものです。フロントで自分で交渉するのはもちろんですが、新しルームキーを手渡されたときに、何も言わずにその場を立ち去る生徒がほとんどです。レストランでサーブされたとき、人前を横切るとき、エレベーターのボタンを押してもらったとき…。いくつもの場面で生徒たちに「いいかい、こういう時はね…」と諭しました。

言葉を知っていることと使えることは別です。’Thank you.’、’Sorry.’ … 誰でも知っている言葉を使えるかどうかは、それを使う状況に身を置く体験が必要です。しかし、もっと大事なことは、それを使うことを大人が子どもたちにきちんと教えることではないでしょうか。(これは日本語でも、英語でもだと思います)

適切な場面でコミュニケーションを円滑にするための適切な所作を学ぶことが異文化理解の重要な一歩です。ことばはその大切な道具の一つです。

言葉を教える、とはそういうことではないか、と思うのです。                                                                                                                      

(右田邦雄・共学部高等部教頭)

 

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