田植えの時期。
田起こしした田んぼに水を張り、土を細かく砕き、丁寧に掻き混ぜ、田んぼの表面を平らにする作業があります。
これを代掻き(しろかき)といいます。
これをすることで、田んぼの水漏れを防ぎ、苗を植えやすくし、苗の根付きと発育を良くします。
また、雑草の発生を抑える効果もあるそうです。
なぜ田掻きではなく、代掻きというのか。
それは「代」は端や隅を意味しており、昔は田んぼの端を「田の代」と呼びました。
そして代掻きは田んぼの端から始めます。
だから田掻きではなく、代掻きと言うのです(また、「代」には田んぼを計る単位としても使われました)。
代掻きは知らずとも、「代(しろ)」のつく言葉は実は身近にあります。
例えば、紙工作をしたことがある人は多いはず。
「糊代(のりしろ)」ならわかるでしょうか。紙と紙をはり合わせる際に「必要な遊び」の部分です。
初めはバラバラであった皆の気持ちを実行委員やパートリーダーを中心に一つにまとめあげる作業はまさに代掻きです。
端から端まで丁寧にかき混ぜる、根気のいる作業です。
次に一つ一つ苗を植え、やがて田は緑一色となるようにクラスがだんだんと一つにまとまるのです。
合唱は、お米が君たちの食卓に届くまで本当に様々な手間がかかっているのと同様に大変です。
お米は噛めば噛むほど味がするように、歌えば歌うほど、味わい深くなります。それが聞き手に感動を与えます。
優勝した三年生のクラスは、さらに「糊代」という歌うことそのものを楽しむ遊びが練習からありました。
三年間という歳月をかけて実ったと言っても過言ではないでしょう。
初めて参加した一年生、先輩たちには、まだ勝てないと思った二年生。
大丈夫。君たちには、人間が成長していく可能性の大きさや余地があります。
それを何というか知っていますか。
「伸び代」と言います。
それを垣間見ることができる合唱祭、私は好きです。
総務部長 對馬 洋介