かつて生物学者や科学者の中には、顕微鏡発明後ですら、精子や卵子の中には「ホムンクルス」=小さな人間が入っており、
それが成長すると主張した人も存在していた時代がありました。
そしてそのようなことはないと判明したのは、つい最近の20世紀に入ってからだそうです。
見えないものが見えてしまうほど未知なるものへの期待をしてしまうのが人なのかもしれません。
一方私の教え子で胚培養士(はいばいようし)になった女性がいます。
医療機関において人口授精や顕微授精などの体外受精の操作を行う医療技術者のことです。
彼女のご両親はなかなか子宝に恵まれなかったこともあり、自分の存在がいかに大切であるかを幼い頃から話してくれたそうです。
そして彼女が、選んだ道が胚培養士。肉眼では見えない胚を通じて彼女はそこに未知なるホムンクルスを見ます。
強い信念と緻密な技術で成長を見守ります。このような子育てもあるわけです。
昨年の一年生にも教えましたが、”butterflies in my stomach”という英語表現があります。
これは直訳の「おなかの中に蝶がいる」から「落ち着かない・そわそわする」等という意味があります。
200名を超える新入生の今の気持ちを表す言葉ではないかと思います。
「そわそわ」には「不安に思う気持ち」というマイナスの感情のほかにも
「喜びで落ち着かない」「期待で胸がいっぱいで落ち着かない」というようなプラスの感情を表す際にも使用される言葉です。
私たちには、期待と不安に満ちた新たな地を求めて羽ばたくたくさんの「蝶々」が見えます。
「木の葉のような虫」が蝶という漢字の由来である通り、彼らはまだまだ薄くか弱いです。
また皆様の期待通りに必ずしも成長しないこともあることでしょう。
木の葉がどこにたどり着くのかわからないのと同様に未知数ですから。
でも、それを楽しむ余裕が大切です。もちろん、そんな彼らにも時には羽を休める場所も必要です。
その先は皆様の元だと思います。
その際には、再び羽ばたく力をお貸しください。
今日11日は、1年生は隣接する宝仙寺への参拝でした。
そこには三重の塔があります。その塔には、「心柱」という一本柱があります。そして、柱の周りの隙間。
これがあるために、地震等の天災にも耐えることができるのです(今日は特別に見せていただきました)。
そして倒れないために、わざと柱の周りには隙間があるのです。見た目の成長以上に見えない心の成長をたくさんするのが中学生です。
決して見ることはできないが、感じることができる「心柱」を育てる6年間の始まりです。
私たちは彼らをガチガチにはしません。「隙間」大切ですから。
もう一つ。
butterfly “fly”には、実は「素晴らしい」という意味もあります。未知なる力を秘めた“Superfly”。
どこまで羽ばたくのか楽しみですね。
総務部長 對馬 洋介