いま高校2年生が学んでいる「否定」表現。
I can’t help crying when I hear the song. (その曲を聴くと涙が出てしまう。)、という暗唱例文がテキストに載っています。
この表現のポイントは’help’。この動詞を「help=手伝う」のように一語一訳式な覚え方をしている生徒には、なぜそういう文意になるのか理解が難しいでしょう。
helpのイメージは下の写真。後ろに倒れかけている女性を男性が支えている図です。
’can’t help ~’ とは、男性が支えきれずに、女性が倒れてしまう状況を指します。
この女性を’crying’ という行為に見立てたのが、先ほどの例文です。「こらえきれずに、思わず涙が溢れてしまう」という状況です。
‘can’t help~ ’→「こらえきれずに、思わず、無意識のうちに~してしまう」というコア・イメージを持つことができれば、あとは自分で応用が利きます。
かつてのプレスリーの代表曲、Can’t Help Falling in Love を思い浮かべるのはウチの校長くらいでしょうが、
“It was expensive, but I couldn’t help myself.” と言えば、「高かったけど、思わず買っちゃった」という衝動買いのことです。
つい先週の授業でこのフレーズを学習した高2生は気づいたでしょうか。
昨日の東大入試問題にこのcan’t help ~ が取り上げられました。
物語文の中で、主人公の女性と母親の葛藤を描くなかで、母親が思わず娘に手を挙げてしまったときに父が言った台詞が、”She can’t help herself.” 。
このセリフを内容が分かるように説明せよ、という問題でした。
「暗記に頼らない正しい知識理解をしているか、そしてそれに基づいた心理描写の読み取りができるか?」――そんなメッセージを東大の問題から受けるのです。
(共学部高等部・右田邦雄)