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第30回 理数インターグローバル「『写真とは違うもの』を見る」

2017/6/21

スタンフォード研修を終え、バスで5時間、一路ヨセミテ国立公園を目指します。

ヨセミテを訪れるベストシーズンは6月だ、とガイドの人たちは口を揃えます。この時期は豊富な雪解け水がヨセミテ滝を、轟音を立てて流れ落ちてくる光景が楽しめるからです。とくに冬季の降雪量が多かった今年は、例年以上の水量を誇る瀑布の飛泉を浴び、滝壺近くでびしょびしょに濡れながら自然の迫力を満喫しました。

ヨセミテはベイエリアから日帰りで訪れることもできますが、宿泊してこその楽しみもあります。その一つは夜の星空です。ロッジを一歩離れれば、暗闇に満天の星。そして、天の川。生徒たちと一緒に真っ暗な地べたに仰向けに寝転がり、時折、空を横切る流れ星を追いかけます。もうひとつの楽しみは、朝焼けのヨセミテバレー。陽が昇る前には聳え立つ渓谷の山肌が真っ赤に燃えはじめ、稜線のシルエットが空に浮かびます。朝靄に霞む草地を雄大なハーフドームを背に散策する楽しみは、ここに一泊してこそ味わえる贅沢です。

そして、ヨセミテ自然体験のハイライトはグレーシャーポイントからの絶景です。渓谷を一望できるこの場所は大型バスでの乗り入れができないため、普段は個人旅行でしか訪れることができません。この旅行では公園バスをチャーターし、標高2千メートルの高さまで登ります。バスを降り、展望台までの坂を登るときの生徒の反応が圧巻です。レッドウッドの木立が切れると、目の前に突然、息をのむようなパノラマの絶景が開けます。氷河が削り取った切り立った断崖が続く渓谷、その背後にはまだ雪を頂いたシエラネバダの山並み。中腹から幾段にも折れて落下する滝、そして眼前には手を伸ばせば触れるようなハーフドームの偉容。思わず「うわあっ!」という歓声が上がります。

筆舌に尽くしがたい、とはまさにこのような景色のことでしょうか。それまでさんざん先輩が撮った写真を見てきた生徒たちが、その場に立ち尽くしながら興奮気味に言います。「写真とは全然違う!」

スマホやネットの情報に身を置き、実体験とバーチャル世界の境目が見えなくなっている高校生や我々にとっても、「写真とは違う」ものが体感できる機会はそうあるものではありません。大自然の威風に五感で向かい合えば、鈍りかけていた私たちの‘sense of wonder’(感性)も刺激をうけ、自然について、日々の生活について考えるものですね。そしてこのセンス・オブ・ワンダーが自分にとって大切な拠り所となり、日常に戻ったときに、そこで感じる倦怠や幻滅の解毒剤になってくれる気がするのです。      

共学部高等部教頭・右田邦雄

“I’m on the top of the world looking down on creation…”

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