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第28回 理数インターグローバル 「シリコンバレーの息吹」

2017/6/15

今年も5年生がアメリカ研修旅行に出掛け、スタンフォード大学・ヨセミテ国立公園・サンフランシスコの各地を廻ってきました。それぞれの地で考えたことを記していきたいと思います。お付き合いください。まずはスタンフォード大学から。

キャンパスのなかでも一際目立つデザインの建物がThe James H. Clark Centerというバイオテクノロジーの研究センターです。(言われてみると分かるのですが)両翼が半円形の二つの建物が向かい合う様は遺伝子のらせん構造を模したもので、建築デザインとしても一見の価値があります。一階部分がカフェテリアになっており、一期生が初めてスタンフォードを訪れた際に最初のオリエンテーションを行ったのもこの場所です。以来私はスタンフォードに来る度に、ここに生徒たちを連れて来ることにしているのです。

そのときはまだ知りませんでしたが、この建物を寄贈したのはNetscape社の設立者ジム・クラークで、彼はもともとスタンフォードで教鞭ととっていた80年代初頭に学生たちと起業をし、その後、株式公開で得た巨額の財産を社会還元するためにこの研究施設を創設したそうです。ブラウザー戦争ではビル・ゲイツのマイクロソフトに敗北を喫するのですが、皮肉なことにこのクラークセンターのすぐ裏にはゲイツが寄付をしたWilliam Gates Computer Science棟が建っているのです。中に入ると直径1メートル以上もある、初期のメモリーの実物などが展示されていて、ちょっとしたコンピューター歴史博物館のようです。

個人が寄贈したり、寄付をもとにできた建物はキャンパス内に多く存在します。スタンフォードのビジネススクールで学んだナイキ社の創業者フィル・ナイツはThe Knight Management CenterというMBA研究センターを寄付しています。ゲイツ棟のすぐ目の前には、いまをときめくHPの創業者ヒューレット、パッカードそれぞれの巨大な研究棟が立ち並びます。二人は30年代後半に大学にほど近い、パロアルトの街の一軒家のガレージを作業場にして製品開発を始めました。(そこは今日ではシリコンバレー発祥の地として史跡にもなっています)もともと彼らに起業をもちかけたのは恩師のフレデリック・ターマン教授で、「シリコンバレーの父」と呼ばれる人物です。学生に起業を積極的に進める一方で、大学の広大な敷地内にハイテク産業を誘致する、PARC(パロアルトリサーチセンター)という工業団地を開発しました。今で言う「産学連携」のはしりです。

知識の源泉である大学。その知識を具現化する企業。そこからスピンオフしたさまざまな起業家やそれを奨励される学生たち。まさに集積の経済ともいうべき環境がここには整っています。そして学生たちが成功の暁には、その利益を寄付や寄贈という形で再び大学に還元するという仕組みがあるのです。(スタンフォードはハーバードと並んで全米で最も寄付金を集めている大学です)

ユニークなデザインのクラークセンターの前に立つと、なぜこの大学がシリコンバレーの聖地であるか、なぜスタンフォードが全米一成功している大学なのかを考えずにはいられません。ここにはシリコンバレー精神のDNAが、有形無形のらせん模様に織り込まれている気がするのです。まだまだ閉鎖的な企業風土にある日本からわざわざ高校生がシリコンバレーを訪れる意味のひとつは、このentrepreneurship(起業家精神)の息吹を感じてもらうことにあると、私は思うのです。

共学部高等部教頭・右田邦雄

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