本日より、学校生活再開です。
今回は、中学校を代表して、中学2年生の学年主任の岡田さんからです。
文人の所感をどうぞ。
富士晴英
2月6日の早春賦(そうしゅんふ)
春は名のみの風の寒さや 谷の鶯(うぐいす) 歌は思えど
時にあらずと声も立てず
冒頭に引用したのは、昔から親しまれている唱歌『早春賦』の歌詞です。
「立春が過ぎて春が来たとは言ってもそれは暦の上のことで、風は冷たくまだ寒い気候である。谷のウグイスたちがさえずろうと思っても、まだその時ではないと黙ったままでいる。」
そんな意味の歌です。ちょうど今の時期にぴったりの歌です。
さて、本校では先週の2月1日から4日までが中学の入学試験でした。本校に限らず都内の私立中学校は、例年この時期が入試期間となることが多いです。
一方、都立高校の入試は1月下旬が推薦入試で2月下旬が学力試験です。そして、大学入学の共通テストが行われたのは、1月15、16日のことでした。
つまり、一年で最も寒さの厳しいこの時期を狙い澄ましたように、受験生たちに次々試練が訪れるということになります。
なぜ、わざわざこんな寒さの厳しい時期に、難関が用意されているのでしょうか。
もちろん、新年度のスケジュールから逆算して、入試の日程が決まっているということなのでしょうが、次のように考えることもできそうです。
「立春」とは、春の訪れを告げる暦です。ということは、新しい一年が始まる日だと言うこともできます。
最も寒い時期に苦労をしたことが、温かくなって桜花のように花を咲かせることになる。そしてやがては、新しい学び舎での新生活となって実を結ぶということです。
2月1日の早朝、駅で受験生らしい小学生の(時に親子連れの)姿を見かけるのも毎年のこと。緊張して不安げな面持ちの彼らを見ると、決まって少し切ない気持ちになり、厚着をして塾のカバンを背負った背中に向かって「ガンバレ!」と言いたくなります。
そんな場面も入学試験とまつわって、一年で最も空気の冷たい真冬の風物詩と言えるかもしれません。
今日は2月6日。入試期間の自宅学習が明けて、生徒たちが学校に帰ってきました。
彼らは〝谷のウグイス〟とは違って、寒さもお構いなし。盛んにさえずっています。学校というのは、そういうところです。
生徒たちがいる限り、教室や廊下は一年中「春」のように生命力に満ちています。だから、学校はいつも明るい場所でなければならない。
そして、いつも笑顔に溢れていなければならない。生徒が夢と希望を胸に抱き、それを実現しようとする場所だからです。
『早春賦』の主題は、「寒さを嘆く」ことにあるのではありません。もう春はすぐそこまで来ている。寒さに震える私たちがそれに気づかないだけで。
今、新しい生命が芽吹こうとしている。新しい希望が生まれようとしているのだ。そう私たちに語りかけているのだと思います。
今週10日からは本校の高校入試が始まります。今度は中学3年生の「早春賦」。
私たちは笑顔で彼らを迎えられるよう、学校中の皆で協力してその日に備えようと思っています。
中学2年学年主任 岡田幸一