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#78 2人の女の子とオレンジ

2021/6/26

 「アリとキリギリス」と言えば、勤勉な働き者と怠け者の代名詞です。「北風と太陽」と言えば厳罰主義と寛容な対応の対比を表すことばです。このように、寓話を題材とした代名詞は日常会話にもよく登場します。では、「二人の女の子とオレンジ」と言えばどんな状況を表す代名詞か、お聞きになったことはありますか。

 おそらく英語圏では “The Two Girls and Oranges” として知られた話なのですが、授業で尋ねたところ生徒たちは聞いたことがないようでした。こんな話です。

 二人の姉妹がたまたま小道で見つけたオレンジを巡って言い争いを始めました。「私が先に見つけたのよ。だからこれは私のものよ。」「いいえ、拾ったのは私だから、これは私のもの。」オレンジはどっちのものかを巡り、姉も妹も譲ることなく延々とやり合います。とうとう見かねて仲裁に入ったお母さんがオレンジの山を均等に分け、二人に同じ数だけ与えました。二人は渋々そのオレンジを受け取りました。

 すると姉はオレンジの皮をむき、その皮でマーマレードを作り、中身は捨ててしまいました。妹の方はというと、皮をむいて中身を絞り、ジュースにして飲み干したあと、皮はすべて捨ててしまいました。その様子を見たお母さんは、「初めから喧嘩をしないでオレンジを何に使うかをちゃんと話し合っていたら、二人ともももっと得をしたのに…」と嘆いた、ということです。

 自分だけで独り占めするのではなく、最初から分け合う姿勢があれば双方が幸せになる、という状況を寓意的に伝える “the two girls and oranges” ですが、分かち合ってhappyになれるものはオレンジだけではありません。

 このストーリーは私の旧友であるLisa Vogtさんが、NHKの語学番組のテキストに寄せたものなのです。独り占めはもったいないので、生徒たちとも共有し、皆さんにもご紹介する次第です。  (寓話収集家・右田邦雄)   

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