僕の中では高校生活のイベントランキング一位に位置するアメリカ研修旅行。僕にとってこの旅は初めての海外旅行であると同時に、言葉や文化について考えさせられる旅でもありました。
5泊7日のこの旅の中で、一番印象的な経験となったのが、現地在住の日本人ガイドさんや日本人留学生の方を審査員にお招きして行われた「英語プレゼン」でした。
高校1年のときから時間をかけて準備してきたこのプレゼン。プレゼン自体すべて英語で話すのはもちろんのこと、審査員の方から英語でされる質問。これがなかなかに曲者で、当たり前ですが、質問の内容なんてされるまで分からないため、その場で返答を考え「英語」で答えなくてはいけないという厄介なものでした。
そんな緊張とともに迎えた本番。うまくプレゼンができた人や途中で止まってしまった人がいる中で、いよいよ僕の番が来ました。僕のプレゼンのテーマは、簡単にいってしまえば、「英語に翻訳しづらい日本語」というもの。僕は、日本茶特有の「渋み」という言葉を例にとり、これらの英訳の難しさについて説明していきました。
プレゼン自体は何事もなくやり切れたのですが、そのあとの日本人ガイドの方からの質問がとても興味深いものでした。
その質問とは、「うま味や渋みなどの独特の言葉はそのままそういった日本語として、無理に英訳せずともいいのではないか?」といったものでした。その時は、「分かりやすく意味
を伝えるためにも翻訳はする必要がある」と返したのですが、その日の夕食の時間に留学生の先輩と話したときに、「うま味」や「渋み」は海外では翻訳をせずに、日本語のまま
使われているのがほとんどだと聞き、衝撃を覚えました。確かによくよく考えると、日本でもいわゆるカタカナ語などの、英語がそのまま使われているという場合もあり、海外で日本語のまま使われているとしてもなんら不思議はありませんでした。そのあとも先生を交えながら議論は続いたのですが、僕はこの経験から、普段なら考えないような語学や翻訳について考え、その面白さに少しだけ触れられたような気がしました。
今回の旅は、プレゼンはもちろんのこと、向こうのスーパーで行う何気ない世間話や店のアナウンスなどですら英語だったため、とにかく英語に触れ、話す、英語漬けの日々。
そんな中で、言葉の多様性や海外旅行の魅力にも触れることができ、自分にとって得難い経験となった、そんな旅でした。 (5年生 K.K.)
追記
K.K.くんが、原稿の依頼に応えるまで、2ヶ月半。
その間、一度、たまたま地下鉄の駅でご両親とともにいる彼を見かけ、「ささっと書こうぜ!」と促したものの、なしのつぶてで夏休みが終ろうとしていました。
2学期まであと数日となったとき、やっとこの文章が届きました。
文章には、人柄がにじみます。自分と異なる意見を聞いたときの、反応の懐の深さ。英語での質問に対して、自分の意見を、英語で答えたことに対して、何の感慨もない嫌味のなさ。
これを読者に味わってほしかったのです。
K.K.くん。ありがとう。次回は、もう少し早めにエンジンかけようぜ。
校長 富士晴英