本校では夏休みを利用し、中学生全員が外部団体主催のコンテストに応募や参加する「夏のチャレンジ」という課題があります。
これは現三年が一年の時に当時主任であった私が始めた企画です。
生徒は入学し、数ヶ月も経つと、新生活にも慣れ、学校は「そういうもの」として受け入れます。
順応はとても大切である一方、「そういうもんだ」をなくすことがバーターであるのも事実です。
今では誰もが知るアンパンマンは、実は小太りのパン屋のおじさんが被り物をしています。
初代アンパンマンは国境を超え、ひもじい思いをしている子どもたちにお腹から出したアンパンを与えるのは有名な話です。
さらに「世界マンガ主人公かいぎ」では、世界のヒーローにニセモノ扱い。
それでも彼は子どもたちのためにアンパンを配り続けます。
最後には、国境を超えた飛行機と間違われ、砲弾を撃ち込まれ、それが直撃します。
作者のやなせたかしさんは、あるインタビューでアンパンマンを通し、訴えたいことは、と問われ
「何もありません。自分が楽しいと思うから描いているだけ。自分が楽しくなければ、読書が楽しいわけがない。」と述べています。
何のためにやっているかはよくわからないが、やってみたいと思った。楽しそうだったから。
動機はそれで十分です。「自由にどうぞ」が主旨です。
これは「他流試合」のため、参加条件や規定はあることでしょう。相手の土俵である以上、当然です。
でも、それが大事で、その不自由さの中で創意工夫を重ねることも知って欲しいのです。結果は二の次で良いのです。
大事なのは、自由と不自由を自ら飼いならす場がいたるところにあることを知り、その場に参加することです。
他流を知ることで初めて自己流を知り、自分を磨くこともあるかもしれません。
ちなみにこの初代アンパンマンの話(「十二の真珠」収録)は400字原稿三枚というのが原稿依頼の条件であったそうです。
砲弾直撃のアンパンマンの安否、彼にアンパンをもらった子どもたちのその後は描かれていません。
それ同様、このチャレンジはいつ、どこで、どのように後に結実するのか、もしくはしないのかは、誰にもわかりません。
でもそれで良いのです。
「待つ」ことは大人の大切な役割です。
出典「十二の真珠」p.63より
総務部長 對馬 洋介