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不如楽之者(校長with広報室blog)第71回『女子部卒業式』

2019/3/1

女子部の卒業式は、3月3日(日)です。
女子部は、この日の直前に、卒業アルバムのほかに、『あゆみ』という生徒文集を発行します。
私は、毎年、巻頭言を依頼され、毎年、本校教員のブックレビュー『筆まかせ』に寄稿したものを再掲しています。
以下、紹介します。
いつもどおりの文体と文章です。
ご笑覧ください。

~以下『あゆみ』より~

『あゆみ』67号原稿

身体表現と言語表現                                                                              
                                 校長 富士晴英

 「知的で開放的な広場」をつくろう。3年前の校長就任時、女子部および共学部の生徒・教員・保護者・卒業生に呼びかけた言葉です。この文章を読んでいるあなたは、この広場つくりに、どのように貢献できたでしょうか。せっかくの機会なので、振り返ってみてください。

 私は、17年間女子校としての宝仙学園に奉職。その後8年間は共学部。3年前から中学・高等学校の校長として勤務しています。校長就任時、私は、女子部には「女子校文化」と「保育文化」が存在しているので、その特色に磨きをかけたいという趣旨のことを、発信していました。それから4年経とうとしている今も、その思いは変わりません。むしろ、体育祭での「ペルシャの市場」や宝仙祭でのミュージカルやダンス部等の舞台発表を見て、そして何よりも、毎月の全校朝礼での校歌斉唱を聞く度に、女子部生徒の良さを実感しています。それは、身体表現活動に積極的に取り組もうとする姿勢と、その結果としての成果といえると思います。客観的に言えば、青春時代の充実感を見せてもらっているように感じています。

 一方、この『あゆみ』は、言語表現活動です。こちらのよさは、上達の成長曲線が、身体能力とは別の軌道を描くことです。いや、年長者になってしまった者は、描くのではないかと思いたいのかもしれませんが。

一昨年度から、女子部と共学部が一緒にできることは、積極的に協力し合っていこうという方針で進めてきました。図書委員会が編集する教員による読書エッセイである「筆まかせ」も、その一つです。ここでは、今年度書いた書評を再録しました。みなさんのこれからの人生の試行錯誤へのエールとさせてください。

2018年度 第1回 ブックレビュー

井出英策、宇野重規、坂井豊貴、松沢裕作『大人のための社会科 — 未来を語るために』(有斐閣 2017年)

 日本の本には、帯と呼ばれる、簡にして要を得た宣伝文字の躍る、巻いた紙がついている。本書の帯に記されているのは、「ぐずぐず言わずに考えろ!」である。一見して、当惑。気を落ち着かせて、こみあげてくるおかしさ。
 普通は、「ぐずぐず言わずに~」に続くのは、「早くやれ!」とか「さっさと働け!」とかではなかろうか。そこを、「考えろ!」とは!!面白い。
 本書では、「希望」とは、「まだない」ものである、という解釈が紹介されている。それなら私は、希望をたくさん持っている!という解釈も可能ですね。

2018年度第2回 ブックレビュー                  

荻上チキ、内田良『ブラック校則』(東洋館出版社 2018年)

 「知的で開放的な広場」に貢献する生徒になるためには、「明るく、楽しく、一生懸命」に「自己ベストの更新」を目指す必要がある。「挑戦なくして、成長なし」だからである。
 「自己ベストの更新」を目指していることを知ってもらうためには、目標を言語化し、公表する必要がある。「失敗は、成長の糧」なので、結果をおそれ、ひるむ必要などないのだ。
 さあ、きみの目標はなにかな。方向性が決まったら、校長室に来て、おしゃべりしてもらうことになりました。…という校則があったら、それはきみにとっては、「ブラック校則」だろうか。きみの考えかたを聞かせてほしい。

2018年度第3回 ブックレビュー 
芹澤健介『コンビニ外国人』(新潮新書 2018年)

 「コンビニで働いている外国人って、優秀だなあ。彼ら彼女らは、日本に来た目的を果たしているのだろうか…」と、かねがね思っていました。外国人労働者から「選ばれる国」になるためには、何が必要なのかを、考えさせてくれる本でした。
 私は、仕事柄かもしれませんが、ジャパンウェイの詰まった日本の中学・高等学校を世界の同世代に体験してほしいと思っています。礼儀正しさ、清潔さ、締め切りを守る等。世界に誇る無形文化財です。(たとえ今はできていなくても、それが大切なことだと思っていない人はいないというのが、この国の教育の特徴です。)
 一方、日本の学校の教員や生徒も、チャレンジングなマインドセット等、世界から学ぶことはたくさんあるはず。言葉を始めとする未知のことは、互いに教え合うような関係性をつくろうとすることこそ、中学・高等学校世代には、本当に大切で必要なことと思っています。
 皆さんは、どう思いますか?

 

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