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New Zealand研修を終えて no2 「実にリアル」

2018/10/6

冬のニュージーランド、初の週末のお出かけ。目指すはロトルアにあるテプイア。有名な間欠泉がある場所だ。
帰りがけにふと足元を見ると、謎の白い物体が地面のあちこちに転がっている。


発泡スチロールみたいだ。
蹴ってみた。柔らかい。軽い。子どものおもちゃのようだ。
近くにいる清掃員の女性は拾わない。
どうやらゴミではないようだ。
これが何なのか気になって仕方がない。彼女に聞いてみた。
「これ?地面から自然に出て来るのよ。」
「これが?どうやって?」
「だから地面から勝手に。」
会話が全く噛み合わない。
しかし、彼女はよほど嬉しかったのか、急に近くに停めてあった清掃トラックまで戻り、私用のゴム手袋を取ってきてくれた。


彼女は手に取りながら、
「We call it △◯@&#%$€ in Maori. It is very spiritual(神聖なものなのよ).」
(残念ながら、聞き取れず、また覚えきれず)
「They call it basket fungus.(籠の形をした菌類)」
「They?」
「Europeans.」
(私の質問で会話はこの後も続く)

それが菌類であることは驚きであったが、先の彼女とのやり取りにあったweとthey。
この単語自体は恐らく誰でも知っているが、中身は濃い。誇りと憤りがある、と感じた。
国籍という括りでは、同じニュージーランド人ではあるが、彼女の心の内では違うのだ。
we=私たちマオリ族であり、they=ヨーロッパから来た彼ら(Europeansと言った後、彼女はさらに勝手に来た入植者たちと言い直した)なのである。

私はこの2語と音の強さに、彼女の民族への誇りと入植者への憤りを感じ、
一方、実は彼女の「私たち」の誇りは「彼ら」への憤りがあったからこそ感じることができるかもしれないとも感じた。
何とも皮肉的だ。そして文化とは精神的でかつ個別化したものだと改めて感じたのである。
というのも、文化(culture)の語源が「耕す、崇拝する、守る」等の意味があるからである。
後日、お世話になっている現地校のマオリの教員にこのバスケットファンガスの写真を見せながら、話をしたところ、
「I’ve never seen.(初めて見た) Not our tribe.(私たちの民族ではないわ)」とのこと。

この時ふと、作家森博嗣さんのある小説の主人公のセリフを思い出した。
「日本では、一緒に遊ぶとき「混ぜてくれ」と言いますね。混ぜるは英語にしたら、ミックス。これは元々は液体を一緒にするときの言葉です。
外国、特に欧米では、仲間に入れて欲しいときには、ジョインするんです。
混ざるのではなく、つながるだけ…つまり、日本は液体(リキッド)の社会で、欧米は固体(ソリッド)の社会なんです。各パーツが独立しているのです(『すべてはFになる』より)。」

映像だけでは伝わりきらない間欠泉のにおいや音同様に、“we” “they” “tribe” という単語。実にリアルな響きだった。

総務部長 對馬 洋介

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