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『手のひらの上に…』

2018/2/6

 先日、ニュージーランドから訪れていた姉弟を連れて、高3生らと東京見物をしているときのこと。地下鉄の車中で姉のチェルシーがペパーミント・ガムを取り出し、みんなに配り始めました。彼女は容器を傾けながら、”I’ll pour you some.” と言って、私の手のひらの上にも何粒かをのせてくれました。その一言が印象に残っているのは、そうか英語ではこんな風に’pour’ が使えるんだという発見と、こんなとき日本語では何て言うだろう、という疑問が浮かんだからです。

容器を傾けながら中身を手のひらの上に乗せる行為を日本語ではどう表現するでしょう。「乗せる」?、「置く」?、「空ける」?どれも少し違う気がします。学校に帰ってから、何人かの先生にも聞いてみました。「こぼす」という意見もありましたが、日本語で何かを「こぼす」というのは、中身が誤って容器から外へ出てしまう場合がほとんどです。色々調べてみましたが、これぞという言い方に出くわさずじまいでした。

そもそも、ある行為を表現するのにぴったりな表現がない、ということは、そのような行為自体がその文化の中では珍しい、ということです。人に何かをあげたり、渡したりするとき、容器から直接相手の手のひらへ中身を空けるという行為は日本では珍しかったのかもしれません。例えば中身が液体であれば、「酒を注(つ)ぐ」のような言い方が存在します。しかし、中身が固形物となると、「ガムの粒を注ぐ」とは言えません。考えてみると、このような行為は昔の生活では存在し得なかったのか、あるいは礼を失する行為だったのかもしれません。

「ことばと文化」を考える上で、興味深い例です。東京見物をしながら、面白い宿題を手の上にのせてもらいました。どなたかご教示いただければ幸いです。

 
(共学部高校 右田邦雄)

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