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#23 ニュージーランド研修便り⑤

2017/8/3

夕方、携帯にホストマザーから連絡が入ります。
「ランチに持っていったリンゴを昨日も今日も食べずに持って帰ってきたのだけど、嫌いなのかしら?フルーツは好き、と言ってたのだけど。」もともと少食でもあり、心配したお母さんが相談してきたのです。本人に代わってもらい、話を聞くと、「リンゴは好きだけど、丸ごと食べたことがないので気持ち悪い」とのこと。そう、こっちのランチにはリンゴやフルーツが丸ごと一個入ってるのは当たり前のことです。バナナをいちいち切って持っていかないのと同じです。「リンゴは切ると変色するし、カットするのは面倒でしょ」とお母さん。それでも「いいわ。明日からリンゴはカットすればいいのね」と心良くOKしてくれました。もちろん本人には、「今度はガブッとかじってみろよ。美味しいぞ。」と言い添えましたが。

キウィフルーツもランチにそのまま入っていて、プラスチックのナイフとスプーンが付いています。しかし、キウィを自分で切ったことがない生徒は、どうしていいかわからず、食べずに持ち帰ってしまいます。「切って」とでも言えればいいのですが、結局言えずに我慢してしまうことが多いのです。フルーツが嫌いなことを言えずに、ずっと我慢していた生徒もいました。「言ってくれればいいのに」とホストマザーから言われるのですが、それが大変なのです。とくに中学1年生位にとっては。

我慢することが美徳とされる文化の中で育った我々は、なかなか「イヤです」と表明できません。しかし、こちらに来るとワガママと自己主張は違う、ということを痛感します。身勝手な要求が通ることがないのは世界共通ですが、選択肢が与えられている状況では自分の意思を伝えない限り、何も起こりません。これはランチの中身だけでなく、週末に連れて言って欲しい場所であったり、部屋が寒い時にもらうブランケットでも同じです。

“Do you like apples?”
“No, I don’t.”

この応答の練習は中学1年生年生でも授業で練習します。しかし、答え方を知っているのと、実際に自分のこととして聞かれた時に “No, I don’t.” と言えるかどうかは別の話なのです。自分の持つ選択肢を英語を通して実現する、と言えば少し大袈裟に聞こえるかもしれませんが、英語を習いたての生徒にとって、この成功体験は大きな励みになるのです。習った英語が自分の手段として使えた時の喜びはなかなか教室では味わえません。わずか一週間程度の短いホームステイ体験ですが、この経験をお土産に帰って帰れるとしたら、中1生でもこのプログラムに参加する意味があると私は思うのです。

   

右田 邦雄 (共学部 高等部教頭)

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