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校長blog第43回 『東南アジア帰国生保護者への講演』

2017/5/31

5月に、シンガポールとジャカルタに行ってきました。

いくつかの場で講演会を行い、受験生・保護者・日本人学校の先生・塾の先生・教育関係者等とコミュニケーションすることができました。
その中で話したことを、一つだけ、再録します。

 本校に在籍している東南アジアからの帰国生の話です。
 入学後、あまり日もたたない時期に、学校に足が向かなくなってしまった同級生がいました。
 この生徒を案じた帰国生を含む同級生たちは、一計を講じ、学校の外でいいから一緒に勉強しようと呼びかけました。
 すると、その生徒は、少しずつ少しずつ、学校に足が向くようになってきました。

  私は、担任からこの話を聞かされたとき、この生徒たちは神の子か、と思いました。
   特に帰国生は、日本の学校や同級生たちにうまく溶け込めるだろうか、溶け込みたい、と杞憂していても、不思議ではないと思います。
   そんな中で、自分よりも適応がスムーズに行かない同級生を見たとき、自分もそうならないようにと、その方向に視線を送らず、順調そうに見える集団に目を向けても、誰もそのことをとやかく言えないと、私は思います。

   にもかかわらず、後ろを振り向き、手を差し伸べた。
   私は、宮沢賢治の言葉を、思い出しました。
   「世界全体が幸福にならないうちは、個人の幸福はあり得ない」(「農民藝術概論綱要」)です。
   この言葉の申し子のような生徒がいる。
    帰国生の中にもいる。

     なるほど、帰国生は、一般的に、pure(too pure?)と感じられることも、確かにあるからなあとも思いながら、やはり、こう思うのです。
    「神の子」も人の子。その優しさゆえにつまずくこともあるだろう。
      そのときこそ、そのことを理解しようとし、支える役割を果たしたいと。
       学校全体が幸福になるために。

                                                                                  宝仙学園中学・高等学校
                                                                                   校長          富士晴英

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